2010年10月 8日
好評!妹尾健句集『洛南』
妹尾健第一句集『綴喜野』(天満書房)以来、10年振り、待望の句集です。
僕が跋文を認めたからではなく、妹尾健の地道な歩みが生み出した句集として、良い句集です。
風の便りに反響も大きいと伺っています。
宇多喜代子氏も「『洛南』にはそんな温か味が籠もる」と帯文に書かれています。
第一句集出版の折り、宇多喜代子氏宅で「草苑」(主宰・桂信子)の句集『綴喜野』特集のために、久保純夫氏と妹尾健氏、小生と座談会をした記憶があります。
その折、口の悪い僕は「妹尾健は、遅れてきた人間探究派だ」といいました。もちろん、褒め言葉でしたが、少し皮肉も入っていました。
ともあれ、俳句作品が境涯としっかり連動している句集は、当時すでに珍しいものになりつつあったのです。流行り言葉でいえばカッコ悪かったのです。それでも、このカッコ悪さは、貴重でした。
浮薄な時代を粘り強く生きる志を失わないことは、次世代へのメッセージなのです。
最近、妹尾健氏は、不定期に「そのうち便り」(自分の住居の〈園内〉をかけて)という個人ペーパーを発行して、地味ながら、自らの立ち位置の意思表示を続けています。
風の息樹の息渡る春の川
黙祷の涙拭はず父の夏
草いきれ老人の目に意志ありぬ
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