2011年11月 1日

横山民子『象の骨』・・

象の骨

 句集名は集中の、

   身に入むや荒野に還る象の骨      民子

から。「あとがき」によると、アフリカ・ケニヤに行ったおり、サファリを毎日車で走ったある日、サバンナの草原に象の屍をみつけたときの数日のこと

「みんな土に還ってゆく、亡びないものはない」とひしひし感じられてできた句のようである。

平成3年から約20年間の「門」(主宰・鈴木鷹夫)の掲載句から編まれた句集である。すなわち、懇切極まりない序文は鈴木鷹夫。およそ師の眼の届き方の繊細さというのに感心させられる。

従って、小生は少し自分の好みに偏するかも知れないが、いくつかの句を紹介したいと思う。

   憲法記念日原点は負けいくさ 

 憲法記念日の「『原点は負けいくさ』の何と的確なことよと舌を巻く」とは序文にあるとおり。その傍の句に、

   軍艦に春の色など塗つてみたし

 とは、前句の傍に置かれて、より諧謔の効いた「春の色など塗つてみたし」となる。あるいは、

   皇后は老い給ふなり白椿

 白椿は痛ましくも美しい(ミッチーブームを思い出すだに・・・)。その傍に置かれた句であれば、帽子の主は天皇陛下であってもおかしくない。     

   椿の森中也のごとき帽子ゐて

 挨拶の句、本歌を踏まえた佳句を散見できるのも、この句集の楽しみの一つであるが、さしずめ次の句などもそうだろう。

   雁を見たる波郷の眼鏡かな

 の句は、「雁や残るものみな美しき」波郷に拠っていると思われる。それは、波郷が見た夕映えの美しさ、と同時にそれらことごとくを残して行かなければならなかった波郷の心情のことでもあろう。それが「波郷の眼鏡」である。

3.11東日本大震災以後の句には、

   はこべらや津波に消えし夫の故郷

   わざはひは人鍛えけり夏柳

著者は浦安にお住いのようだから、被災されてもいる。

   春窮のひとつか給水車に並ぶ

   液状化の泥を覆ひし花の影

だらだら、駄文を記すのも気が引けるので、最後にいくつかの句を上げよう。記憶に留めたい句ばかりである。

   朱鷺を死なしめ日本の春逝きぬ

   同時テロのその裏側の吾と虫

   誰も長き物語もつ炉端かな

   酔狂の竹夫人抱く少し鳴る

   鉄線花言葉はいつも遅れけり

 

柿 蜘蛛などvol.3

柿 蜘蛛などvol.4

| コメント(2)

コメント(2)

  

11月に入りましたね。
どれも可句ですがいちばん好きな句は
誰も長き物語もつ炉端かな
です。
赤い実はなにでしょうか。実葛と思いましたがちょっと違うようです。

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