2011年11月17日

瀬尾千草句集『りあん』・・

りあん瀬尾千草vol.1

 句集名『りあん』は、連句人である著者が、自らの「莉庵立机」にちなむ庵号からのもの。その自祝前書の句に、

   一粒の種零れたり風光る       千草

 生国は岐阜、大野鵠士「獅子門」にて、連句を学ばれ、その大野鵠士「序ともなく」という序文は、美文調のいささかの古めかしさを宿しているが、陳べれば「庵を訪ふ人、さだめし澄みわたる鈴の響きを天籟と聞くべし」と言う。

 鈴の音はともかくとして、次の句には、小生、勝手に中原中也の「汚れつちまつた悲しみに・・・」を思い起こした。

   汚れつちまつた雪ふむ車輪かな

その「山羊の歌」に収められた出だしは、

   汚れつちまつた悲しみに

   今日も小雪の降りかかる

   汚れつちまつた悲しみに

   今日も風さへ吹きすさぶ

   (中略)

   汚れちまつた悲しみに

   なすところもなく日は暮れる・・・

 この悲しみの雪を車輪とともに踏んだのは作者か。いずれ本歌のフレーズをテキストにしていることは、連句門外漢の小生にも気づかされるところだ。

 さらに、次の句も、虚子翁「爛々と昼の星見え菌生え」の換骨奪胎とみれば、おのずとその味わいも違ってくるというものであろう。

   くさびらのかさひらひらとひるのなか 

 「発句たる風韻を備へ、頻りに付心を誘ふは訝しむに足らず」と「序ともなく」に記した大野鵠士の付心は、全句に及ぶのではないかと思われる。

その鈴の音には、耳を塞いで、いくつか小生の好みの句を上げさせていただいて挙句の替わりの駄文のお詫びとして締めくくりたい。

   銀河系地球番地の初明り

   からくりの夜叉となりゆく花の闇

   浮いてこいといふ前にもう浮いてをり

   かくとだに伊吹艾屋風薫る

 「かくとだに」には「丈草が好きで釜屋の艾買ふ」天魚を思い浮かべた。

   鷹鳩に化す丸薬の銀五粒

   黄心樹の花さりげなく秘事遂げむ

   柳散る恋してゐてもゐなくても

 最後になったが、菊地信義の装丁も素敵だ。

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 今日の編集長は「セレクション結社~浮野」の取材で落合水尾宅へカメラマン同行。

草田男句碑 根岸界隈vol.3

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