大山安太郎全句集・・・

全句集というだけあって大冊である。収録句数は2000句を超える。
第一句集『白光』の刊行が昭和45年、その第一句集を収めてのち、星霜はめぐって、待望の第二句集がすなわち全句集と成った。
著者・大山安太郎は大正5年、福岡県生まれ。俳句は昭和25年「自鳴鐘」で横山白虹に師事した。以来今日95歳まで62年の句歴を誇る。その間、当然ながら、数人の敬愛すべき俳人にもまみえている。例えば、山口誓子(天狼)、鈴木六林男(花曜)など。
全句集巻尾には、『白光』収載の白虹による「共に歩む抄」も再録されて、当時の安太郎俳句の鑑賞文も味わうことができる。
句は編年体で収められているので、そのまま大山安太郎の句の足跡をたどることもできる。
全句集に付された跋文の和田悟朗「過ぎゆく雲」、寺井谷子「光遍く」は、大山安太郎の句の見事さのみではなく、その人物像をも彷彿とさせる愛情あふれる懇切なものである。従って、お二人の跋は、大山安太郎俳句のファンをさらに増やすにちがいない、と思われる。
愚生が、このブログで、句集紹介の屋上屋を重ねても遠く及ばないどころか邪魔になるだけ、といってもいいくらい素晴らしい跋なのである。
是非直接手にとって読んでいただきたい全句集の所以である。
閑話休題・・余談ながら、大山安太郎は、『西日本反核平和詩歌句集』創刊の1984(昭和59)年、第一集「火の遠景」から第十一集「蟻のいのち」まで、毎年参加されている。全句集句歴には記されていないが、こうしたことも見逃せない句業のひとつだろう。
まなぶたを閉ぢても月の鶴歩む 安太郎
大山安太郎は第一句集出版後に現代仮名遣いに転じている。
〈祝 寺井谷子様御結婚〉
いまこころ触れあうひばりの高さにて
もうろうたる頭脳柳に一葉なく
さくら狩りさくらの中にいて迷う
ベッドの舟ふんどしを帆にいずかたへ
わが激痛に百の向日葵が笑っている
妻と二人寿命大事に寒北斗
原発炉心溶融の空鳥帰る
大山安太郎が出会った方々を追悼した句があるが、その中から、いくつかの句をあげ、最期に小生の好みの句三句を紹介してこの稿を閉じよう。
悼 橋本多佳子 五月二十九日
橋の行手雨中に消えて多佳子なし
八月十三日父の死
父焼かれゐるにラムネの瓶握る
横山白虹先生ご逝去
逝かれし師銀杏金色(こんじき)の葉を散らす
八月二十日逝く 九十九歳
うろこ雲のなか行く母の骨抱きおり
悼 穴井太氏
みまかるや寒の夕日を領したもう
悼 東山魁夷氏
「道」一枚残し青野を逝かれけり
悼 鈴木六林男 十二月十二日
師の名呼臘月玄海の闇に向き
悼 長谷川陽三画伯
パレットに虹を残して逝かれけり
幹はまだ闇にねむれり朝桜
わが罪の鯖火となりて燃えつづく
闇なれど花への道を歩きおり

原発炉心溶融の空鳥帰る
95歳の方のお句ですね。私も長生きをしたいと思いました。
昨日は、時間がなく、ブログも途中になってしまいましたので、少し書き足したいと思っています。
全句集ですから、読み応えもありますし・・・。