2012年3月 9日

「鬼瓦版」・・・

鬼瓦vol.1

 「鬼瓦版」は中嶋鬼谷氏の個人紙である。ご恵送いただいた。

 その記事中に「俳句界」3月号の池田澄子氏のエッセイ「あの日から一年」に触れられた部分がある。

 それは、三橋敏雄「今や有り余るプルト二ウム秋の暮」の句についてだが、池田澄子氏の「優れた芸術は未来を予兆すると言われるが、本当にそうなった時に初めて、成程そういうことであったかと意識するのである」を引いて、中嶋氏は至言だと述べ、その前段に「三橋敏雄は、この句において、日本という国が核兵器製造の可能性を秘めた国であり、その準備は疾うに完了していることを言っているのだ。日本は何基もの原発を可動させ、原爆の材料となるプルト二ウムを作り続け、すでに核兵器1250発分に相当する10トンのプルト二ウムを貯蔵しているといわれている。(中略)三橋敏雄は、核の平和利用の蔭にある原発の正体を見抜いていたのである」と記している。

 小生の印象では強面の印象がある中嶋氏だが、マブソン青眼の「花の上に花散る吾子よごめんなさい」の句に寄せて「原発事故の後、東京の水道水が汚染され、私自身、七歳、四歳、二歳の孫に、心の内で『ごめんなさい』とつぶやいていた」という件には、思わずホロリとした。続いて「大人たちが、日本という国をこんな事にしてしまった。その大人の一人に私もいる」とあったのは切ない。

井上伝蔵vol.1

 その中嶋鬼谷氏に10年ほど前、中嶋幸三著『井上伝蔵ー秩父事件と俳句』という一本がある。小生は本著によって井上伝蔵とは誰か、を知った。帯文には「暴徒にあらず、国事犯なり!」とあって、そうだ!と思ったのだった。国事犯とは、政治犯である。さらに帯には、秩父困民党関係の著書も多い井出孫六が「秩父事件の会計長井上伝蔵は 欠席裁判で死を宣告されながら、北海道に逃れ、柳蛙の名で数々の句を遺していた。秩父生まれ事件に浅からざる縁を持つ俳人中嶋鬼谷が、謎に包まれた伝蔵の境涯を、それらの句を通じて見事にとらえた渾身の作品だ」と賞揚しているが、まさに至言。

 少なからぬ縁とは、本著によると鬼谷氏祖父・中嶋多次郎こと太次郎である。官憲は「不和随行セシ輩」として「罰金二円五十銭」。しかし、これらを調べ上げた鬼谷氏は、「万余の参加者には万余の意思があった」と、暴徒にあらず、秩父自由党の公憤がそうさせたのだ、竹槍をつかみ農民軍として自らの意思をもって戦ったのだ、と思ったのだ。

井上伝蔵またの名を伊藤柳蛙。

    扱ひも行届(ゆきとどき)けり梅の宿     柳蛙 

    梅雨晴や手向けの水に立つ煙 

    思ひ出すこと皆悲し秋の暮 

 他にも、現在、鬼谷氏は、俳句誌「燐」に「鬼の系譜」と題して、様々な鬼について連載されている。

京都日販vol.3

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