2012年5月 2日

中山くに子『祭太鼓』・・・

祭太鼓

 句集名は次の一句から、

    港町祭太鼓の踊り打ち      くに子

 著者は石巻に住まわれているので、当然3.11にも被災されている。序文は柏原眠雨。その後半に「くに子俳句は総じて晴れやかで健康的である。色は白が多く詠まれており、植物の季語には明るい花がよく出てくる。(中略)教員生活を終えられてからは、(中略)社会的な活躍ぶりも目覚しい。この後も息災に過ごされ、津波禍の悪夢に打ち勝ち、ご主人ご逝去の悲しみを越えて、新たな生活を逞しく送られるよう、心より祈ってやまない」と結ばれている。

 多趣味の方のようだ。巻頭に載せられている六葉の写真はご自身の撮影のもの。

句にもそれらしいのがある。

    姫神山(ひめかみ)を撮る冬空の青を背に

    カメラ背に木道を行く夏帽子

また、日本舞踊も練達の人。

    舞ひ納め舞台を研く年の暮

 句集を出したいと決意された心根には、津波で大規模半壊した家から、コピーしていた句稿が、海水に浸かりながらも、奇跡的に手元に残ったこと、さらには、体調を崩した夫君が逝去されるなど、多くのものを失くされて、なお再起へと踏ん切りをつけようとする志すらうかがえる。それが「総じて晴れやか」に通底しているエネルギーなのかも知れない。

    浸水の二階の窓に春の雪

   津波去りし海黒々と大花火

   長き夜や言葉少なく夫看取る

ともあれ、以下の句などには、小生好みの趣も感じられて、しみじみとするのである。

    松島の松にさし込む春日かげ

    新入生意気揚々の定期券

    秋雨の降り始めたる仕舞風呂

    煤払ふ子の背に見る夫の影

    竹刀振る足裏白し初稽古

    立ち籠むる雲を染めたり遠花火

花水木.jpg

蛮と花vol.2

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