2012年5月12日

河野裕子『うたの歳時記』・・・

小金井道の花vol.1

 小社編集部には俳句関係の雑誌や書物は、とめどなく送られてくるが、短歌や詩の関係はほとんどない。

 山本健吉文学賞も俳句部門に限られてしまっているせいかも知れない。

 ただ、その中にあって永田和宏氏には、ことごとくご恵送いただいている。

 つい先日も河野裕子『うたの歳時記』(白水社)を送っていただいた。ありがたいことだ。

 本著は「NHK歌壇」「NHK短歌」に二年間ずつ合計4年間連載されたものが収められている。例句はともかく、例歌は文字通り現代短歌が多く引用されており、門外漢にとっては、 短歌の現在を知ることができる好著に思える(しかも、末尾には、必ず河野裕子の一首とともに解説のような小文が付されている)。

 永田和宏氏の解説によると、2000年9月に河野裕子に乳癌が見つかり、10月には手術をし、それでも収録を休むことなく、息子の永田淳氏の押す車椅子で新幹線に乗り東京駅に着き、その日の収録でも外目には元気一杯で、「外に出れば己を全開にする」河野裕子の本領が発揮され、誰も手術後の身体だったとは気付かれなかったようだ。 

次の歌は河野裕子第一歌集『森のやうに獣のやうに』から、

  たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか

 この歌集の選歌構成をしたのが永田和宏だった。歌集冒頭に置かれた歌は、

  逆立ちしておまへがおれを眺めてた たつた一度きりのあの夏のこと

青春真っ只中、17歳から23歳の歌を収めている。

 その永田和宏氏の連載「河野裕子と私ー歌と闘病の十年ー」(「波」・新潮社)も5月号で最終回を迎えた。毎回胸が熱くなる連載だった。

 相槌を打つ声のなきこの家に気難しくも老いてゆくのか      和宏

 手をのべてあなたとあなたに触れたきに息が足りないこの世の息が  裕子

 さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ

小金井道の花vol.2

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