2012年5月17日

褒めるほうが楽?・・・

五月の花vol.6

 今日の編集部は、編集長とスタッフ松本は、8月号のための辺見庸氏のインタビューに朝から出かけている。

 とりわけ3.11以後の彼の発言は重く、深い。自らの全存在を賭けて、するどく発言されている。

 それは、最近の大道寺将司全句集『棺一基』の長文の序、跋にもうかがわれる。

道の花上野ほかvol.4

ともあれ、今日は、編集部に送られてきた「円錐」第53号・編集後記の今泉康弘氏の記事に触れたい。

 氏は、名画座でよく映画を見るのだが、最近は始終菓子を食べたりうるさい音を立て続ける者が増えて、以前は、そうした人に「うるさい!静かにしろ!」と叱る人がいたが、いまは叱る人もなく、傍若無人な行為が増えたと歎いた後、「俳句について言えば、俳句総合誌の作品がつまらいのは、『つまらないぞ!』とハッキリ言わず、ほめ合いに終始しているからだろう。真剣に批判するのはシンドイ。とにかく褒める方が楽だ。そのことを最近になって身にしみて知った」とある。

 氏は現在、本誌「新作巻頭3句鑑賞」を連載していただいている。氏が映画好きと言っているくらいだから、映画のこともよく出てくる。精一杯の批評を試みていることも文中から伝わってくる。確かに辛口な部分もあるが、それは、氏が日常的な感懐に句の表現レベルを流してしまわないで、俳句形式がつちかってきた表現史のなかで、一句がどのように置かれているかを常に念頭に置いているからだろう。

 3月号現代俳句協会特集の鑑賞では、金子兜太、宇多喜代子作品にもよく切り込んでいる(6月号・5月25日発売予定)。

 それでも、本誌・第12回俳句界評論賞授賞の期待される若き批評家として、根底には俳句に対する並々ならぬ愛情をもって、切り込んでいるので、気持ちが良い。

 まして、俳句の読みが間違っていて、的外れになっているわけではないし、むしろ一句の的に向かって引き絞られている、といえよう。

 それが氏に「真剣に批判するのはシンドイ」という言葉をもたらしたのかも知れない、などと、思ってしまった。

 氏は、自らも俳句を書くので、なおさら、自身に刺さる矢として感じているのだろう。

 しかし、本誌のこの連載はなかなか好評なのである。

 その「円錐」には「エリカはめざむ」という渡邊白泉論が連載されおり、厳密な調査と遺族の方々への取材をふくめて、白泉の戦後、亡くなるまでの沼津時代をよく描出していたが、11回目の今回でひとまず終了、機会があれば戦前の白泉も書きたいという意思があるようだ。

 さいごに「褒めるほうが楽だ」とあったが、褒めるのもこれまたなかなかシンドイものだ、というのは、も少し年齢を加えてからであろうか。

 何時の時代も、「物いへば唇寒し秋の風 芭蕉」なのだ。この句には、実は前書が付いている。

 それは「人の短をいふ事なかれ 己が長をとく事なかれ」。

 元は中国の文らしい。「唇寒し」は「唇亡びて歯寒し」(「春秋左伝)によるとか。

小金井道の花vol.3

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