2012年7月10日

岩渕真智子『レモン』・・・

岩渕真智子『レモン』vol.1

 句集名は、

    みぞおちの辺りが孤独レモン買う       真智子

から、レモンといえば、梶井基次郎の『檸檬』に、気が向いてしまうが、

上句「みぞおちの辺りが孤独」によく、響いていよう。

(檸檬は爆弾の比喩でもあったのだから)

「序に代えて」で谷口亜岐夫氏が懇切に書かれておられるので、これ以上の筆は、屋上屋を重ねるのみで、いささか心もとない。

で、敢えて記してみるに、『レモン』は、やむを得ぬ事情を宿した〈子恋〉の句集ともいえる。

       平成十六年二月 長男事故死

     満面の笑みの遺影や春愁い

     成人の子もまた子なり熱帯魚

       亡き子を思いて

     冬すみれ長子天より戻るかも

     花野から君が戻ってくる気配

     プーさんを飾り亡き子と冬に入る

     成人となりても我が子つくづくし

     戻らない息子が夏山おりてくる

     逝きし子の部屋にも飾る初暦

     丁寧に組み立てている茄子の馬

     盆灯籠かたみの時計遅れがち

     寒林に上目遣いの長子居て

 最後の〈寒林〉の句は、「付録」として、(「氷原帯」入会以前の作品〉収められているが、

 実は、平成17年2月3日、つまり長男翔一郎氏の一年忌に遺稿をまとめた写真入りのアルバム仕様の本『カーテンコール』(小社刊)として出版された中に収められた真智子氏の句でもある。

 その本には、母・真智子氏の句とエッセイ、長男・翔一郎氏の高校時代のシナリオや、彼の小学校、中学校ハリウッド美容学校での小文、加えて、成長記録ともいえる家族写真などが収められているA4判の大冊だが、さすがに遺稿集の趣と相俟って、胸を熱くさせる。

カーテンコールvol.1

 話を元に戻して、最後にいくつか、愚生好みの句を上げさせていただきたい。

    無言という許しもありぬ春隣り

    縁うすき人だけ残り桜山

    立春や過去のことではもう泣かぬ

「もう泣かぬ」 とは、切ない決意のようなものだが、また、泣いてしまうのであろう。

   白シャツが風を切ってる次男坊

 「次男坊」には長子の分まで十二分に人生を生きてもらいたいとおもうのは、作品を離れた愚生の気持ちである。

 因みに、著者は昭和28年北海道生まれ。「氷原帯」「歯車」同人。 現代俳句協会ジュニア研修部副部長、国際部員。

ヤマユリ↓

現代俳句協会ジュニアvol.3

| コメント(1)

コメント(1)

  

幼ないお子さんんを亡くされたのですね。

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