2012年7月23日

小谷野三千世句集『紫のワルツ』・・・

句集『紫のワルツ』

 句集名は、

     紫のワルツ踊らむ藤の花      三千世

 の句から。藤の花の句はほかにも、

    身の内に残照を飼ふ藤の花

    紫の晴着に抱かる藤の花

 藤の花は作者自身のアナロジーとしても読める。そう読めばたおやかな女性が浮かんでくるだろう。

 著者「あとがき」には、芭蕉の『おくの細道』の暗唱法を師・五島瑛巳に学び「八十歳も過ぎた私も暗唱できるようになりました」とあるから、努力家でもあり、すでに人生において多くのものを身につけておられるのではなかろうか。俳句は、師の五島瑛巳に平成19年にまみえたとあるが、その以前に「海坂」でも句法の基本を学ばれていたであろうから、大きな花を咲かせる素地は十分にあったのだろうと思われる。

 そのあたり、著者の人となりについては、序文において五島瑛巳氏が詳しく、愛情深く記している。それに応えるように、

    若き師はわが料理美味いとぞ

と句に詠み、

    吐月峰(とげつぽう)虫燦々と師の仏画

とも詠む。この句には、次のように「注」が付してある。

   吐月峰・・・静岡市にある宋長住いの庵「柴屋寺」に、

         師・五島瑛巳が巨大杉板に岩絵具で描いた仏画  

         〈白龍と赤い仏〉が奉納されている。

また、止むを得ないこととはいえ、亡き夫を詠んだ句も多い。夫恋の句集の側面も見逃せない

なかなか切ない。

    共に老い夫(つま)は逝きけり初螢

    亡夫来よわが白髪の春の琴

    浮寝鳥ふたりぐらしの老いもよし

    一徹の夫に頼らる老いの春

    湯豆腐やけんくわも少し六十年

    亡き夫とふらここ漕ぐや花の昼

 何れも捨てがたい句ばかりである。次の句には、大いに楽しませてもらった。

   東京には今年の夏はまゐりません

 この句は、間違いなく、シャンソンの「想い出のサントロペ」の日本語訳「この夏はサントロペにはまいりません/お借りしたあの家にはもうまいりません/この夏はサントロペにはまいりません/他のどなたかにどうどお貸し下さい」の一節を拝借して一句をなしていると思われ、諧謔味のある句となっている。この唄を愚生は、若い頃、30年以上前に金子由香利のレコードで何度も聞いた想い出がある。まだ、「銀巴里」があった頃のことだ。元唄は確かコラ・ヴォケール。

 最後に、いくつか愚生の好みの句を上げさせていただこう。

   月光におぼれつつ行く膝がしら

   向日葵は土の力を己にまとふ

   初鏡八十路の紅を愛しみて

   足りてなほ憂きこと多し鰯雲

 ヘビイチゴ↓

浅間山の花vol.4

 今日の編集部・林編集長はスウェーデン大使館にトーマス・トロンメルと俳句についてのインタビューのために出かけている。

キジバト↓

浅間山の花vol.5

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