2012年8月23日

上野弘美句集『木曾青嶺』・・・

木曾青嶺vol.1

 句集名は、

    木曾青嶺阿六櫛の名世に残り     弘美

 の句から。

 阿六櫛(おろくぐし)は、木曾地方の名産品でみねばりの木から作られるという。

 その名の由来は、大きさが六寸あったからという説や、もっとも有名なものは元禄年間に、

 頭痛の持病に悩んでいた村娘のお六が、御嶽山に願をかけたところ、みねばりの木で作った櫛で髪を梳かしなさいというお告げをもらい、そのお告げに従って、櫛を作り、髪を梳いたところ、たちまち頭痛がしなくなったという伝説らしい。

 著者が木曾の青嶺に惹かれ、たびたび木曽路を訪れておられるのだろう。

  他にも木曾を詠まれた句は多い。例えば、

      行き着きし駅舎を叩く木曾驟雨

     澄みきつて木曾源流の朴の花

     六月の日矢瑞々し木曾の嶺々

     木曾川の闇こそ浄土魂送り

     木曾古道木漏れ日よぎる黒揚羽

     桐の花木曾路は雲の湧きやすく

     子規句碑に緑深まる木曾の風

 上げれば切りなくある。

いずれにしても、三句目の「六月の日矢瑞々し」のように、向日性を宿した句姿に特徴があるようである。

それは、

     不器用な生き方もよし寒牡丹

の句にある著者の姿勢に通じているのかも知れない。

     少年の跳ぶ春水を眩しめり

にも、「春水を眩しめる」、心根の清しい姿をうかがうことができる。

最後に、印象に残った句のいくつかを紹介したい。

     戦争を知らぬ子ばかり初蛍

    花へ押す卒寿の母の車椅子

    大泣きに母を追ふ子や秋彼岸

    猪罠や田にのしかかる山の影

    生まれたる仔牛に力雲の峰

    みちのくや芽吹きの囲ふ無人駅

    曼珠沙華日和といふがあらば今日

 

8月18日の花vol.1

| コメント(0)

コメントする