2012年10月10日

大島知子句集『祈り』・・・

句集『祈り』

 句集『祈り』はなかなか切ない句集だ。

劈頭の句は、ご主人を亡くされた句から始まる。

    千両の紅鮮やかに一周忌     知子

 それでも、亡くなってから、さらに夫との対話が増えたはずである。

 ことさらに千両の赤い実は輝いて濡れているように見えたに違いない。

    千両も墓に供えて三回忌

の句もある。「あとがき」にも、次のようにしたためる。

  亡くなった人たちのことは月日がたっても忘れることはない。むしろ悲しみは深くなり、後悔するこ 

 とばかり増えてくる。逆に亡くなった人達から与えられた宝物は数を増してくる。

 ここ数年の間に、夫に続いて、妹、さらに逆縁でお二人の息子さんも亡くされ、父母も亡くされている。

 言葉も無い。

    夫も子もあの世にありて冬の月

    冬銀河その傍らに夫と子等

 ただ、介護の父には、元気つけられる句もある。

    父の日やパソコンほしと九十五

 これら、作者の事情については、序文を寄せた岸本マチ子氏が愛情深い筆致で連ね、「頑張ろうね、知ちゃん。いつだって何処にだって陽の当る道はあるのだから」と結んでいる。

 ともかく、残りの人生を生きてなければならない。多くの亡くなった人たちが見守っているのだから。

    諍いのできる倖せ青あらし

   天空に私の虹よ水を撒く

   ゆっくりと背泳ぎでゆく初泳ぎ

   屈託を誰にも言えず春時計

   母の日や母の遺影に知恵を借り

   妹の遺せし単衣袖とおす

   生姜湯を手に寄りそいて地震の夜

   被災せし友も集いて麦の秋

著者にとって『祈り』は、「ごめんねとありがとうを込めた句集名」なのである。

ハギ↓

ハギvol.1

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