2012年10月31日

増田斗志句集『今年竹』・・・

句集『今年竹』vol.1

 句集名は、

     今年竹触れ合ふことを覚えたり     斗志

の句からと著者「あとがき」にある。

さらに「句集を編むに至ったのは、今年二月にダイヤモンド婚とも言われている結婚六十周年を迎え、その自祝の意に依るものであった。傘寿を越えた今なお、充実した作句活動が続けられることに大きな喜びを感じている。と同時に、平素よりの句友からの温かい声援を感謝しているところである」とも記されている。

自祝の意のあるところ、その妻を詠んだ句をいくつか上げさせていただきたい。

     菜園は妻のステージ夏に入る

     鬼やんま妻に捨て目を呉れてをり

     日盛りの足音妻にまぎれなし

     春眠のなかの往き来に妻のこゑ

     老妻に迸(ほとばし)る汗ありにけり

     われ黙し妻食ふ初さんま

     人日の妻にとどかぬ棚いくつ

     一月の妻に真白き糸切歯

  中でも二句目の中七・下五「妻に捨て目を呉れてをり」のフレーズは、軽い嫉妬もあるようで面白い。

しかし、鬼やんまがたとえ男性であったとしても、いささかも動じる様子がないのは、これも歳月の積み重ねの自信とでも言えようか。まして、「捨て目」などと、いまどきの若い人には到底思いつかない措辞だ。さすがに年齢と句歴を重ねた渋味のある色が感じられる。

 また、

     恋螢ともるに間合ひながかりし  

 の趣も捨てがたく、その伝でいけば、冒頭の句の「触れ合ふことを覚えたり」も、いのちの輝きというか生命としてのエロスが表現されているようにも思える。  

 句集全体としては、自在の境地、自在の言葉遣いが魅力的な一本、ということができようか。

 その魅力を愚生の好みの句として最後に上げさせていただきたい。

     炊きあげしご飯のやうな花の山 

     着ぶくれて絵になつてゐる媼かな

     掌はあやうき器花の種

     「われを捨てる遊び」に俳句龍の玉

     星の子も入れて帰りぬ螢籠  

     佛心も鬼心も大事雲の峰   

     今年竹この世の端が見えますか

     一つ家に小声大ごゑ萩の花

     筋書きの無き世よかりし初硯

上野vol.1

上野vol.2

| コメント(0)

コメントする