2012年12月12日

泉とし子句集『フーコー振り子』・・・

句集『フーコー振り子』

   博物館のフーコー振り子秋の声    とし子

 句集名は上記の句からで、「あとがき」によると、上野の国立博物館にある約50キログラムの球の振り子のこと。ここは著者の泉とし子氏が「私の好きな楽しみの場所の一つ。多くの未知の世界があり、貧しい心がなごみ、私をリセットしてくれる場所」だという。フランスの物理学者レオン・フーコーの振り子は、その実験で、初めて地球の自転を証明したのだそうである。

 この句の魅力は星野恒彦氏の懇切な序文にもあるように、「H音の繰り返しが、秋風を呼び寄せ、そこに立つ人間存在のはかなさを感じさせられもする」という読みに代表されるだろう。

 それは、一句のリズムや、調べを創りだすのに、多く五七五の頭韻を奏でるところから来ているように思われる。恣意的に上げてみてるが、例えば、

    天の川砂漠に溢れんばかりなり

    はなびらの間をひろげてや梅の花 

    たかむらの一隅ひかる春の水

    浮氷をざぶんとかぶる浮氷

    円やかな入口のある枯葎 

などの句のA音の繰り返し。また、KO音とA音の相乗の句、

    凩やコーヒーの香の寒山寺

あるいは、

   山の湯の石あたたかき二日かな

A音、I音、U音など、句作りの態様において、音韻が次の言葉を呼んで来る、つまり、言葉が言葉を呼ぶ(生む)という詩歌としてはもっとも大切な方法を獲得されているようにさえ思える。それは花鳥諷詠と言われようと、客観写生と言われようと、かつて愚生が阿波野青畝から聞いた、「俳句で一番大事なものは?」という問いに、「それは言葉です」と明確に答えられたことと軌を一にしていると思われる。 

  このほか、多くの海外詠が収録されているが、こちらは眼前の景を大事にするあまり、言葉自身が自由にもたらされてるわけではなさそうだ。写生的なのだ。

      マチュピチュ

   秋の蜂空中都市の水汲み場

   インカの風空中都市の蘭の花

ともあれ、集中、心動かされた句の第一は、「悼 川崎展宏先生」の前書のある句、

   しぐるゝや句碑に心の文字大き

であり、「しぐるゝや」にははるかに芭蕉をも同時に思い起させる。

最後に愚生の好みの句をいくつかあげておこう。

   おのづからもつるるほのほ春焚火

   ゴトビキ岩の火種鑽(き)る山春祭り

   海のかぜ海ひかりやつるし雛

   ちりちりとはじめの白やさるすべり

   すずらんの日に日に鈴となりゆけり

   スカイツリー御神輿の鈴鳴つてゐる

   出番待つ足は踊つてをりしかな

   黒百合や岩間を水のほとばしり

さざんか↓

さざんか

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 大阪・吹田市在住、64歳・男です。
お願いがあります。12月26日読売新聞朝刊に「泉とし子」様の句が掲載されております。「四季」というコーナーですが連日、スクラップをし、入力しております。紙上にはない作者の出自なども併せて入力しておりますが、泉様に関するネット記事が見つかりません。ご存知でしたら、出身地・生まれ年などで結構ですので、お教えいただけないでしょうか。

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