2013年6月 4日

中尾公彦句集『永遠の駅』・・・

中尾公彦句集『永遠の駅』

 句集名は、次の句からである。

     すばるとは永遠(とわ)の駅なり竜の玉     公彦

集中にいくつか駅の句がある。

     もう帰る燕か駅長だけの駅

     キャンドルや枯野の果てに父の駅

     白息の白息つつむ駅にゐる

       「何求(と)めて冬帽行くや切通し  源義」

     冬帽の辿り着きたる父の駅

     紅玉や夜行列車の停まる駅

「すばるとは永遠の駅」と断定された句は、いささかのノスタルジーを宿した駅の他の句とは違う趣である。それを角川春樹は次のように言う。

   この句を鑑賞する前提で、次の私の一句が参考になろう。

     いのちまた還るいのちや天の川     角川春樹

  人間の魂は、宇宙の銀河にあり、地球上に人間として生まれ変っててくる。死後も  

 また宇宙の銀河に還っていくのだが、その乗り換えの駅は月であったり、別の惑星

 であったりする。

  中尾公彦の「竜の玉」は惑星の象徴である。そして、中尾公彦にとっての魂の乗り

 換え駅は「すばる」なのであろう。「すばるとは永遠の駅なり」の措辞は、実に素晴ら

 しい表現だ。「竜の玉」の例句として文句なしの傑作。

また、椅子に愛着といおうか、少しばかりの思いが宿されている。

     さへずりや交番にあるパイプ椅子

     鳥の恋プーサイドのパイプ椅子

     かりがねや沖にまむかふ椅子一つ

とはいえ、何といっても団塊の世代らしい作者の社会に対する眼差しを留めた句に心的な声が聞こえるようだ。いくつかを上げてみよう。

     海の水コップに立たせ沖縄忌

        「シオン」とは、エルサレム市街の丘の名。シオニズム運動の象徴

     火を焚くやシオンへ向かふ冬の音

     漁り火の色も凍てたり多喜二の忌

        「イマジン忌」は十二月八日。ジョン・レノンの忌日

     置き去りの真つ赤な手套(しゅとう)イマジン忌

     核の冬血豆だらけの詩を書かう

     白骨の森となりたるフクシマ忌

   しかし、まだ青春の香を留める句がないわけではない。はるかに傷を負っている魂がまだくすぶっているのかも知れない。 

   傷口に脈のあつまる夜の新樹

   真夜中のあけびの割れて火薬臭

   大根引く大地の微熱晒(さら)しけり

   テロといふ赤い文脈威銃(おどしづつ)

 最後に、集中の、小生の推してやまない句を上げさせていただきたい。それは碧梧桐忌を詠んだ句、

  ねぎ蕎麦のねぎの青さや寒明忌

高島屋にて↓

高島屋にてvol.1

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