2013年7月23日

本多俊子句集『光のうつは』・・・

句集『光のうつは』vol.1

 句集名は次の句による。

    海神(わたつみ)は光のうつは鳥帰る   俊子

その理由を著者は「あとがき」に次のように記している。

   ハワイの伝承によれば、私たちが人間として生まれてくるときに、一人ひと 

 りが光の器をもって誕生するといわれております。その光をいつも大事にして

 「詠み続けたい」との願いを込めた私の心の風景です。

 著者は現在88歳。略歴には、昭和20年8月、夫戦死とあり、俳句は昭和61年に「琅玕」岸田稚魚に師事、平成3年に「槐」岡井省二に師事、省二亡きのちは現主宰の高橋将夫に師事している。本句集は『さくらの音』に続く第2句集である。

高橋主宰の帯文中にも「光と色が織りなす心の世界」とあるが、まさにそうした光に満ちた句集である。しかも、若々しい志にあふれた感じさえ伴っている。

それだけではない年齢を重ねただけの透徹したまなざしがある。

とりわけ、天と地を駆ける趣がある。

   天地の涯を結びて花野かな

そして、星、天狼星である。

   天狼や太平洋に咳ひとつ

   天狼や眼澄ませば心また

   櫂あらば天狼めざし漕ぎゐでむ

   天狼や老の美学のありにける

 さらに、

   八つ手咲く師の深きこゑ星のこゑ

ここでの「師のこゑ」とはたぶん俳句の神のような存在のことではなかろうか。

俳諧的と思われる句もある。

   安倍川餅(あべかわ)の黄粉も飴も子規忌かな

   端渓の海を色なき風わたる

   微笑みは返すものです大嚏(おおくさめ)

   よろこびもかなしみもなく秋の雲

   天上も天下もつつみ大師粥

 自在とさえ思える句の数々にいささか脱帽気味である。こうしてあれやこれやを包み込んでくれる気がしてくるから不思議だ。

  そして、最後にほほえみ返してくれるのである。

   秋風やほほゑむやうに歳重ね

   枯蟷螂なれどほほゑみありにけり 

句集『光のうつは』vol.2

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