2013年7月29日

杉戸ゑるざ句集『のうぜん』・・・

句集『のうぜん』

 句集名は、巻頭の次の句から、

   ひと泣きの後凌霄(のうぜん)の濃かりけり    ゑるざ

 名和未知男の序文によると、「草の花」最若手だそうである。俳号「ゑるざ」は、ケニア生まれの雌ライオン、アダムソン夫妻に家族同様に育てられた「野生のエルザ」から「どんな状況でも生きていけるようにとの自分への応援歌的な命名」(序文)なのだそうである。

句集を貫くテーマははっきりしていて、著者は次のように述べている。

   谷中根岸千駄木等の古きよき昭和の佇まいと東京スカイツリーや六本木ヒルズ、再開発中 

 の丸の内の高層ビル群が混在している、情趣と新しさの融合、この東京的センスを俳句の世

 界で現、表現したい、というのが以前からの私の独自な俳句のテーマでもあります。

 しかも、

   句集なのに格好可愛い、と言われるような装丁にしたい、若い世代にも共感の得られる句

 集にしたい(あとがき)

という希望もあった様子・・・なかなか要求のレベルが高い。よって、井筒靖章の装丁は新書版、ビニールカバー装で気軽にハンドバックにも入り、持ち歩いてもオーケーという感じに仕上がっている。ノウゼンの花をあしらって赤を基調とした色遣いで見返しも赤。たしかに若い女性向きである。

句の題材は現代的だが、表現は意外に古風とみたが、いかがだろうか。

    イチローは打ちしかけふの雲の峰

    秋暑しパソコンに出るあかんべえ

    菩薩にも夜叉にも涼の新たなり

    大正の上がりは戦車絵双六

    煮凝やポスター古りし浜の酒肆(しゅし)

    元日の夜に聞くヨハンシュトラウス

  それは、たぶん、もうひとつの著者のテーマ、いわば追求課題として、自らに課している問題と切り結んでいることなのかも知れない。それを次のようにも記している。

    伝統俳句の美しさは「有季定型(季語があり五七五の韻律)」にあると思います。この伝統

  を崩さず、新しい切り口で花鳥諷詠(自然とそれにまつわる人事、花鳥をただ無心にうたう)を

  表現したいと今、模索しています。(同前) 

ともあれ、結びにいくつか、そのやわらかな印象をとどめた句をあげておきたい。

   地と水のひと色になる秋日かな

   水蕎麦の水少し足す秋の昼

   名入れして四条通に日記買ふ

   三角に野の広ごれる冬日和

   寒明のもの皆淡き色したる

サンゴジュ↓

サンゴジュvol.1

| コメント(0)

コメントする