2013年9月 2日

谷本元子句集『木椅子』・・・

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 『木椅子』は「あとがき」によると第4句集である。

とはいえ、本句集には、以前の上梓の句集『栞しままに』(平成8年~10年)、『まどかなる』(平成11年~15年)、『月の花野』(平成16年~20年)の各句集からの抄出に加えて、今回の題でもある句集『木椅子』(平成21年~24年)から成っている。

俳人としては、順調な歩みと言えよう。

幾多の思い出が降り注いでいるらしい「木椅子」の句もいくつかある。

   外苑の木椅子にひとりづつの秋     元子

   小春日の木椅子きのふとおなじひと

   一冊の本と木椅子と夏帽子

上記の句の「木の椅子」がある風景の季節が「秋」「小春日」「夏帽子」とそれぞれに違うのだが、季節感にそれほど多くをゆだねているようには思えない。むしろ、各季節のそれぞれは、風に運ばれてくる淡い感じがまとっているのではなかろうか。

例えば、以下の句句が風に語らせているように・・、風のような人かも知れない。

  コスモスや聴くともなしに風の私語

  芒野をはなれて風を見うしなふ

  風よりも低くかがみて菫摘む

  空蝉の吹かれて風のこゑとなる

  コスモスを風あるやうに活けにけり

  風がまづ目覚めて野川春謳ふ

  つかの間の風の言の葉しやぼん玉

  風薫るボタンをふたつをはづさうか

  風鈴をはなれて風を見失ふ

それでも、それぞれに辿る記憶は鮮明であるのかも知れない。

  あやとりの指の記憶や居待月

  水昏(くら)し百灯しても蛍の夜

  ラムネ飲む海の蒼さをさを傾けて

あるいは、

  短夜の夢のつづきにまどろみぬ

というような夢が残されているのであろうか。

序文は懇切にして愛情あふれる玉文の「あざみ」主宰・河野薫。

オシロイバナ↓

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